小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2014.07.16更新


 
猫の皮膚糸状菌
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■皮膚糸状菌とは数種類ある真菌(カビ)の1種類を指します。 
 皮膚糸状菌が動物の皮膚に感染して、表皮の角質層、被毛、爪鉤において増殖する皮膚病です。 
皮膚糸状菌にはMicrosporum属、Trichophyton属、Epidermophytonがありますが、動物では前者2つの感染が主です。

 猫はMicrosporum属の中のMicrosporum canisは常在菌で、そのため猫の皮膚糸状菌にはMicrosporum canisでおこることが多いです。常在菌なので、皮疹は激しくありません。
 参考までにEpidermophyton属はヒト由来の真菌です。

 動物の皮膚も人同様、最大の防御システムで、皮膚バリアーで保護され、外部からの病原体は侵入できないようになっています。
 猫ではMicrosporum canis常在菌なため、湿気が多い環境で皮膚・免疫が弱っている子猫では皮膚糸状菌症が発症する場合もあります。
 また成猫でも猫白血病、猫エイズなど免疫を弱らせる疾患にに罹患していると同様に発症が診られる場合もあります。
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■注意
 皮膚糸状菌は人畜共通伝染病
のひとつです。注意は必要ですが、猫を触れた後は手洗い等で十分に予防できます。
 一緒に抱いて寝るなど、過剰なスキンシップをしない限り感染はありません。
(参考・猫を一緒に抱いて寝て、皮膚糸状菌に感染したお子さんのケースは2014年6月に放映された日本テレビ系 『世界一受けたい授業』でも紹介されてました。)
 また多くの猫を長く飼育されている方は、床の埃からもMicrosporum canisは高率に発見されます。
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■症例


 写真、生後2ヶ月の猫の尻尾に皮膚病ができて来院しました。

 

尻尾が赤くなり(紅斑)、少々痒がっています。皮膚糸状菌はこのように紅斑病変を示す場合もあります。


感染症は上記のように経過とともに皮疹は変化します。
参考ページ  
猫の皮膚糸状菌(落屑状皮疹の症例)  
 
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■診断
 毛の顕微鏡検査・また真菌培養などでおこないます。

(写真は本症例の皮膚培養で診られた大分生子)
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■治療
イトラコナゾール錠剤
 この症例はアゾール系真菌剤の写真のイトラコナゾールを1週間投与したところよくなりました。
2週間位投与して、その後パルス療法に変更して、1ヶ月間位の治療をします。

ケトコナゾール錠剤
 同じアゾール系真菌剤でも写真のケトコナゾールの経口薬は抗真菌効果は高くありません。
猫では食欲不振になる場合もあり使用は薦められません。
 しかし古い薬剤なので、副作用を逆手にとって、猫のクッシング症候群などには使用しているケースはあります。
 
 胃内が酸性のとき、吸収が良い薬剤です。海外のヒトの投薬例ではコカコーラと共に薬剤を飲むことを推奨するケースもあります。

ケトコナゾールクルーム
 写真のケトコナゾールクリームは副作用の軽減が目的で塗布を希望される方もいますが、猫の皮膚にはなじみません。特に皮膚病変が深くまでおよんでいるとクリーム製剤で悪化する場合もあります。
 
 ヒトの皮膚糸状菌症でも皮膚病変が深いにも関われず、抗真菌剤のクリーム製剤を使用して悪化をした場合が紹介されています。
 『クリーム製剤』と聞くと、やさしいイメージがありますが、軟膏製剤に界面活性剤をいれた製剤です。ヒトでは衣服にべトつかないなど利点もありますが、皮疹を診て使用しないと逆効果になります。

ケトコナゾールローション
 ケトコナゾールは写真のローションもあります。バニシング製剤で塗布してすぐに乾くため、猫でも局所の小さな皮膚糸状菌なら使用は可能です。

 しかし私の考えは猫の皮膚糸状菌の治療はイトラコナゾールを経口投与することが無難とおもいます。

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投稿者: オダガワ動物病院