小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2014.10.04更新

■アゾール系抗真菌剤 
 アゾール系は最も多く使用されている抗真菌剤です。
構造的分類は①イミダゾール(窒素2つ、ミコナゾール、ケトコナゾール)と②トリアゾール(窒素3つ、フルコナゾール、イトラコナゾール)の2つの化学構造があります。

 アゾール系抗真菌剤の副作用は
①全身にある代謝酵素、P450(CYP3A4)を阻害する点
P450(CYP3A4)は肝臓の多く存在します。本剤は肝臓で排泄されます。すなわち肝臓毒性あります。

②胃のpHにより吸収の問題がある点
 とくにケトコナゾールは脂溶性が高く食後投与が最適です。生物学的利用率を高めるには十分な食事内容(高脂肪食)をとる必要性があます。
 空腹時の投与は吸収しません。そのため胃内の吸収を最適pHをにする目的でコカコーラを服用すると良いことが記載されている専門書もあります。しかし動物にコカコーラは現実性はありません。
 

 これらの問題点は最新の薬剤になるぼど改善されていますが、各薬剤の長所、短所はありますのでよく調べてから投与する必要があります。

(写真・ケトコナゾールとイトラコナゾール)
■アゾール系 
  臨床的には開発メーカー別に考えた法が便利におもいます。
ヤンセン社開発のアゾール系薬剤を解説します。ケトコナゾールは吸収に胃pHが関係します。ヒトではコカコーラと一緒に飲むと一番吸収がよいです。空腹時は吸収しません。動物では食事と一緒にとる必要があります。
 また全身にある代謝酵素、P450(CYP3A4)を阻害するので、薬剤の併用は超注意です。 そのためステロイドや男性ホルモンの分泌もおさえます。
 猫にも使用しない法がよいです。

 この薬剤の拙い性質を少なくした薬剤がイトラコナゾールです。ケトコナゾールの第二世代です。錠剤を食事と一緒にとります。食事と一緒にとる必要はありますがP450(CYP3A4)を阻害は少なく、薬剤の併用もかなり可能です。ステロイドや男性ホルモンの抑制もありません。
 猫に対する副作用も少ないです。
 欠点解消として2008年に開発されたイトラコナゾール液体は空腹時にも吸収できます。(液体は食事時も空腹時も吸収する見解も)
 イトラコナゾールの注射液は高張液なので、動物では使用はしにくいです。

 一方ファイザー社の開発したフルコナゾールは薬剤吸収するために胃pHは関係しません。猫へも使用も可能です。錠剤の吸収率も良好です。注射液も等張液で使用しやすいです。分子量が小さく、脳脊髄(イトラコナゾールは分布不可能)・膀胱にもよく分布します。しかしP450(CYP3A4)を阻害が多少あります。2010年に販売されたボルコナゾールはのフルコナゾール拙い性質を少なくした薬剤です。フルコナゾールの第二世代の薬剤です。多く使用されていない点が欠点です。

■ミコナゾール Miconazole
 ミコナゾールは初期のアゾール系(イミダゾール系)抗真菌剤です。腸管からの吸収が悪く錠剤はありません。
現在写真のマラセブシャンプー(ミコナゾール2%含有)が薬用でよく使用されています。

■ケトコナゾール  ketoconazole 
 1976 年にベルギー ヤンセン社で合成された、初めての経口可能なイミダゾール系抗真菌剤です。 
 外国では1985年頃に販売されました。
後に日本でも経口薬(人用)の販売は検討されましたが、肝臓毒性が強いため中止になり、ローションとクリームのみの販売になりました。
 
■注意点 
 写真のケトコナゾール錠剤は本院では現在使用してません。
 理由は抗真菌剤の初期の薬剤なため副作用が多い点と日本では手に入らないためです。
 
 副作用は特に猫では食欲不振や肝臓毒性の可能性が高く(25%で起きる)です。主作用の抗真菌の効能も高く期待できません。そのため本院では猫は禁忌と考えています。
 犬も高用量を長期使用したときはまれに肝臓毒性があります。
  
 肝臓の解毒酵素チトクロームP450を阻害するため、長期使用時は肝臓のチェックを適時にすることを薦めます。また同様の代謝経路の併用薬も注意が必要です。ガスターを飲んでいる場合は胃のpHはアルカリに傾き、ケトコナゾールの吸収はよくありません。 
 
 このチトクロームP450は副腎でコレステロールから男性ホルモンまたステロイドホルモンを合成する時も活躍します。
そのためクッシング症候群時にケトコナゾールはよく専門書に記載されてます。しかしこの作用はケトコナゾールがチトクロームP450の阻害作用が強くでるため、副作用を利用した処方です。
 
 ヒトでは真菌症の個体で男性ホルモン・ステロイドホルモンが減少して副作用を示す場合もあり注意が必要です。男性が女性化乳房のなったり、男性の機能が停滞した報告があります。

■ケトコナゾールクルーム
 ケトコナゾールクルームの動物への使用は本院では禁止と考えています。(ローションは必要な場合は使用してします。)

イトラコナゾール Itraconazole(ITCZ)
 1980 年ベルギーのヤンセン社で合成されました。
抗真菌のスペクトルが広域でしかも強力な抗真菌活性を有するトリアゾール系抗真菌剤でケトコナゾールの欠点を補うことが目的で製薬されました。
 皮膚糸状菌、マラセチアその他真菌に使用します。 
 
 この薬剤は皮膚(角質層)に多く貯留することがモルモットの実験で証明され、皮膚真菌症の長期使用は2-3日に1回の投与でも十分な薬効は期待できます。
 
 肝臓排泄で肝臓でヒドロキシイトラコナゾールに変わります。
イトラコナゾール未変化体とともに、この物質も抗真菌作用を示します。肝臓障害は殆どありません。チトクロームP450の抑制はケトコナゾールよりありませんが薬剤の併用は注意は必要です。ステロイドホルモン・男性ホルモンの抑制はありません。

 分子量が大きい薬剤なので髄液、眼には吸収はよくありません。
しかし投与量を増すことで膀胱内の真菌には効果がない訳ではありません。 

 カプセルはケトコナゾールの性質を引きずっているため食事と一緒に採って効能を示します。空腹時の投与は薦められませんが、液体は胃pHに関係なく投薬できます。

■フルコナゾール Fluconazole [FCZ]
(写真はフルコナゾールの注射液) 
 ファイザー製薬が開発したトリアゾールに属する薬剤です。獣医領域では多くは使用されいないので詳細なデーターがないことが欠点です。
 特徴は消化管から速やかに胃のpHに関係なく吸収し(80%以上)非常に水溶性が高く、すべての体液によく分布します。
 分子量が小さく脊髄脳関門も通過して髄液を含む全身臓器への移行もスムーズであることです。
排泄は肝臓です。半減期も30時間と長いことが特徴です。
 チトクロームP450の抑制はケトコナゾールよりありませんが薬剤の併用は注意は必要です。ステロイドホルモン・男性ホルモンの抑制はありません。








作者: オダガワ動物病院