猫の甲状腺ホルモン亢進症(川崎市多摩区、オダガワ動物病院)
2015.08.29更新
■猫の甲状腺ホルモン亢進症
ホルモンの語源はギリシャ語の『hormaein』で、『呼び覚ます、刺激する』という意味があります。ホルモンは動物が生きていくためには大切な物質で分泌量が変化すると病気の原因になり注意が必要です。
今回は猫の甲状腺ホルモン亢進症のお話です。甲状腺はのどぼとけの下あたりにある器官です。甲状腺ホルモンはそこから分泌され、体を元気にするホルモンで、新陳代謝を活発にして、交感神経や心臓の活動を高め脈拍を調節します。甲状腺ホルモンが過剰になると、新陳代謝が異常に活発になり、体内が常に運動しているような状態になります。
猫の甲状腺ホルモン亢進症1980年代からアメリカで診られはじめました。当時は猫のキャツトフードが一般化した時代なので、それらが原因という説もありましたが、正式には原因はよくわかっていません。
ヒトでは甲状腺ホルモン亢進症はバセドウ病が多く20-40代の女子に発生する疾患です。免疫の働きに異常がおこり、自分の体を異物とみなして、攻撃する自己免疫疾患のひとつでおきます。同じ甲状腺機能亢進症でも猫とは発生機序は大きく異なります。
猫の甲状腺ホルモン亢進症は10歳以上に多い病気です。食べていても体重減少が診られ、高血圧、動悸、息切れ、疲れ易い、眼球の吐出がありますが、最近は無症状の症例も診られます。心拍数が上昇して不整脈の原因になり希に突然死もおきます。そのため早期の発見、治療が必要な疾患です。食欲亢進、元気がベースになっているため動物病院には来院しにくいため、罹患率は教科書で記載されていより多いと予想されています。
この猫は13歳で、よく食べるにもかかわらず、少し前まで4kgあった体重が2.6kgになったので来院しました。身体検査では頻拍、軽度の血圧上昇がありました。スクリーニングの血液検査は軽度の貧血、また生化学検査では肝臓酵素の軽度の上昇が診られたため甲状腺ホルモン(サイロキシン)を直接測定をしまました。なお腎臓機能は検査からみる限り正常でした。
甲状腺ホルモン(サイロキシン)T4、FT4を測定したとこる高値を示し、臨床症状と合わせて甲状腺ホルモン亢進症と診断しました。---------------------------------------------------------------------
治療は抗甲状腺薬の投与をおこないました。甲状腺ホルモンが作られるのを抑える薬剤です。当院では最初は少ない量から投与しています。この猫も薬用量の半分で始めました。
2週間後には正常の下限までに減少しました。体重も2.9kgにアップし、血圧も正常になりました。しかし腎臓機能が多少上昇してきたので、現在投与量をさらに減少して経過観察中です。
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